せっかくトウモロコシを栽培するなら、上の写真のようにはしたくないですよね。一応確認しておきますと、これ、食べた後の写真ではありません。
実は受精できた雌穂の絹糸(いわゆるトウモロコシのヒゲ)の数と可食部の粒の数は同じです。
即ち、ヒゲの部分(絹糸)の数本に花粉が付かずに受精できない部分ができると、その部分(その本数)だけ歯抜けになってしまいます。
よって、
歯抜けのトウモロコシを作らないためには、雄穂(てっぺんの穂)から出る花粉が、雌穂の絹糸(ヒゲの部分)に満遍なくかかる必要があります。
そこで、今回は花粉が、膨大な数の絹糸1本1本までしっかりかかるように受粉させるにはどうするべきか考えるべく、
受粉をうまくさせるための栽培本数・受粉のタイミング(時間帯)・雨だとどうなる?・受粉の仕方は?
についてお伝えします。
トウモロコシの栽培本数
まずは基本のおさらいですが、畑には何本のトウモロコシを植えていますか?
実はトウモロコシは1本、2本など栽植本数が少ないと受粉がうまくいかない場合が多いのです。
なぜかというと、理由は2つあります。
トウモロコシの栽植本数が重要な理由①
1つ目は雄穂(てっぺんの穂)の花粉が出るタイミングと、それをキャッチするべき雌穂のいわゆるヒゲの部分が出る時期がずれるためです。
まず始めに雄穂が出て、花粉が出始めた後、3日後くらいから雌穂のヒゲが出始めます。
これは自家受粉を避けるためのトウモロコシの生存戦略で、1つの品種でも雄穂の出るタイミングが1週間程度バラつきます。
それゆえ、本数が植えられていないとうまく受粉できない可能性があります。
トウモロコシの栽植本数が重要な理由②
2つ目は、1つ目に付随することなのですが、受粉は基本的に風によって行われるので、少しの本数しかないと風向きによりうまく花粉がかからない可能性があるからです。
トウモロコシの受粉が成功しやすい栽植方法
しっかりと受粉させるためには本数が必要ということを上でご説明しましたが、実は植え方にもポイントがあります。
それは、1列で植えるよりは、前後左右に並びあうように植えてある方が花粉がかかりやすいということです。
どの方向から風が来てもOKだと、満遍なく花粉が付く確率が高まりますよね!
受粉のタイミング(時間帯)
それでは、受粉のタイミングと時間帯についてお伝えします。
まず雄穂の花粉は、雄穂の先端が見え始めてから3~5日で開花します。
開花始めから終りまでの期間は8日から9日です。
開花の時間帯は、午前8時~12時頃です(中村 1977)。
葉が黄色く見えるくらい花粉が出ていると、バッチリです。
その一方、花粉を受け取る側の雌穂はというと、話が重複しますが雄穂の開花の1日から3日遅れでヒゲ(絹糸)が出始めます。
絹糸の受精能力はおよそ10日間とされていて(中村 1977)、その間に花粉が付く必要があります。
雨の場合は?
上記のまとめになりますが、
- てっぺんの穂の花粉が出始めて、数日遅れてトウモロコシの部分のヒゲが出てくる。
- 花粉の出る時間は午前中。
という所はご理解いただけたと思います。
ですが、この時期って梅雨に重なることが多いですよね?
花粉は出るのでしょうか?とご心配されている方もいるといると思います。
ズバリ申し上げますと、
雨の場合は雄穂が開花せず、花粉が出ません。
ですが、ご安心ください。雨が止むと午後でも開花します(中村 1977)。
トウモロコシの受粉
最後にトウモロコシの受粉についてです。トウモロコシは一般的な花のような雄花や雌花があるわけではありません。
トウモロコシの受粉は、てっぺんの雄穂の花粉が、雌穂のヒゲ(絹糸)に付いていれば大丈夫です。
絹糸はよく見ると花粉をキャッチしやすいように、毛のような引っ掛かりがたくさんあります。
花粉が絹糸につくと、絹糸の中に花粉管が伸びていき、およそ24時間で胚珠にたどり着き受精が完了します(中村 1977)。
受精が完了すると絹糸の伸長が止まり、先端から枯れて茶色になってきます。
絹糸全体の伸長が止まって、茶色くなり始めたら受精できたということなので、あとは収穫まで待つだけです。
この後の話になりますが、このヒゲの茶色具合が収穫目安の1つとなります。ご興味のある方は下の記事もどうぞ。
おわりに
梅雨が続いていますが、受粉はうまくいっていますでしょうか?
この時期に開花が重なるような作型だと、昨今の大雨だったりで受粉がうまくいかないことがあります。
ハウスで栽培されている方は、受粉を促すために風を当てて花粉がうまく落ちるように工夫したりできるんですけどね。
露地栽培だと、開花が梅雨時期にあたらないように播種時期をずらす位しか対策は難しいかもしれません。
雄穂が出てくる頃になると、アワノメイガなども出てくるので、それについてはこちらをどうぞ。
参考文献:
中村茂文. 1977. “生殖成長期の生理、生態.” In 『農業技術大系』作物編第7巻, 農山漁村文化協会, 基40-基43.
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