梅雨時期も後半戦ですが、今週は台風のような横殴りの雨で困りましたね。
さて、スイートコーンはそろそろ収穫時期に入ると思いますが、順調でしょうか?
今回はトウモロコシの収穫タイミングと保存方法についてです。
いつ収穫してよいのか、どのように保存すればよいのかを解説します。
まだ雄穂がでていない場合はこちらも併せてどうぞ
トウモロコシの収穫目安
トウモロコシの収穫適期を判断するためには、2つのポイントをチェックします。
トウモロコシの場合は、同一品種を播いていても、受粉のタイミングが一度に揃うことはなく、10日程度バラツキます。そこで、2つの指標から総合的に判断して、早く熟したものから収穫していけるとベターです。
収穫指標1
まず1つ目の指標は、雌穂の絹糸(ヒゲの部分)が抽出してからの日数です。
上の写真が、雌穂のヒゲの部分(絹糸と言います)の見えはじめで1日目です。
そこから数えて、18日から21日目が収穫適期とされています (大久保ら 1971)。
収穫適期が数日でも過ぎると(雌穂の絹糸が抽出してから22日目以降)、トウモロコシの粒がしなびてへこんできます。粉っぽくて、おいしくありません。
収穫指標2
そして2つ目は、雌穂の絹糸の色です。
外観的には、トウモロコシの雌穂(ヒゲ)が茶色くなったころが収穫適期と言えます。
左が若いとき(ブロンズヘア)で、右が収穫適期までもう一歩の雌穂です。
また、収穫時期になるとカラスもやってきたりしますので、そんな時は食べ頃です。
収穫の時間帯
何日ごろ収穫できるのかわかったところで、次は収穫の時間帯についてです。
スイートコーンの農家さんが、夜が明ける前からライトを付けて収穫しているのをテレビ等でみたことがありませんか?
「昼間に光合成でためた養分を夜間に転流するから、朝一に収穫したものが甘い」というような説明があるかもしれませんが、これは間違いです。
増田ら (1997)、真部・大友 (1984)、日高ら (2004)と多くの研究者によって検証されていますが、いずれの結果も収穫時間帯の違いと全糖量には有意な差はなかったと報告しています。
つまり、朝収穫しようと、昼に収穫しようと、いつ収穫しても甘さは同じということです。
加えて、アミノ酸含量やグルタミン酸含量は午後から日没時のほうが、日の出の頃よりも高くなるという報告もあります(増田ら 1997)。
むしろ夕方収穫してみるのもアリですね。
スイートコーンの収穫後の保存方法
スイートコーンは、収穫時の気温が高く、未熟な段階で収穫するので呼吸量が多くなり、収穫後の品質が低下しやすい品目の一つです。
できることなら収穫直後に、ゆでるなり、レンジでチンするなりして食べるのがベストです。
とは言っても、大量のトウモロコシをどうすればよいかと思うかもしれませんが、スーパーでは常温で販売されていますし、適切に保存すれば、そこまで糖度の減少を気にする必要はありません。
昔(昭和40年代から50年代)のスイートコーンは、糖度が4%程度しかなく、収穫後常温で1日経つと、糖含量が半減するとされていました(日高ら 2004)。しかし今のスイートコーン品種は糖度が12%ほどあり、貯蔵性もよくなっています。
今のスイートコーン品種で行われた試験の例をあげると。。。
ハニーバンタム・早生200を用いた試験では、室温(25~30℃)で 貯蔵しても全糖は、1日後で1%、2日後で1.5%程度の減少しかなく、収穫後直ちに4℃で4時間冷やしてもほとんど違いがありませんでした(真部・大友 1984)。
また、味来390を用いた試験でも同様な傾向で、収穫後丸1日は、朝収穫したものも午後収穫したものも、室温で糖度は保たれ、3日目を過ぎると減少幅が大きくなりました(日高ら 2004)。
ただし、気温24℃で収穫し、段ボール箱に詰めた場合、呼吸による発熱により12時間後には34℃まで品温が上昇したことが報告されています(真部・大友 1984)。
収穫後に段ボール箱やビニール袋で密封するのはよくありません。
農家さんの場合には、新鮮な状態で出荷および販売するために、気温の低い早朝のうちに収穫し、収穫後は速やかに 5°C 以下で4‐7時間程度冷やし(予冷と言います)、さらに販売時まで、 10°C 以下で品温を維持することが望ましいとされています(柘植ら 2017)
家庭菜園ならば、収穫袋を閉じずに熱がこもらないように家まで持って帰ってきて、当日中に調理ができない場合は、冷蔵庫に入れて保存しておけばOKです。
おわりに
今年のトウモロコシは順調にいっているでしょうか?
ぜひとも収穫適期を逃さないように収穫してくださいね。重要なのでもう一度おさらいすると、絹糸の抽出から18日から21日目になる頃に、絹糸の色を見て総合的に判断して、収穫してください。
それと、ちなみにポップコーンは爆裂種という表面が固いタイプのトウモロコシからできます。なのでスイートコーン(甘味種)では作れませんので、スイートコーンの場合は甘味を十分楽しんでくださいね。
それではまた。
参考文献:
増田亮一, 山下市二, 金子勝芳 (1997) “スイー トコーン呈味成分含量の収穫時刻による相異.” 日本食品科学工学会誌 44(3): 186–91.
大久保増太郎, 石井勝, 福田稔夫, 成川昇 (1971) “スィート・コーンの収穫熟度と品質の関係および 収穫後の品質保持.” 千葉県農業試験場研究報告 11: 22–27.
日高秀光, 岡部玲二, 中原亜理江, 渡邉和夫 (2004) “スイートコーン主要品種の収穫後の品質特性.” 九州農業研究 66: 224.
柘植一希, 大中創太, 今井峻平, 元木悟 (2017) “スイートコーンの異なる貯蔵形態が収穫後の しなびの発生に及ぼす影響.” 園学研 16(2): 185–95.
真部孝明, 大友譲二 (1984) “スイートコーンの収穫時間および収穫後の貯蔵条件の違いが品質に及ぼす影響.” 日本コールドチェーン研究会誌 「食品と低温」 10(4): 113―117.
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