このところ私的に興味はあるんだけど踏み込めずにいる。それが生分解性マルチです。
2000年頃にブームがありましたが、その当時のものは値段が高い上に、破れやすく使い物にならないといった評判だったかと思います。
20年経った現在では、海外で日本のゴミを受け入れてもらえずに、マルチの処分に困るなど、そろそろ真剣に生分解性マルチについても考えなければという段階に入ってきたのではないでしょうか?
そこで本記事では、生分解性マルチとその素材、製品比較そして、実際の使用感と注意点について書いています。
生分解性マルチの使用を検討されている方は、参考にしてみてください。
生分解性マルチとは?
生分解性マルチとは、簡単に言うと(微)生物によって分解される性質をもったマルチングフィルムのことです。
敷きわらなどのリビングマルチもありますが、今回はプラスチックフィルムの代替となるものに焦点を当てていきます。
ひとまず生分解の定義を見ておきましょう。
生分解とは、単にプラスチックがバラバラになることではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質をいいます。@日本バイオプラスチック協会
光で劣化してボロボロになるだけではだめで、最終的に二酸化炭素と水になることが条件です。
生分解性マルチの素材
生分解性マルチの素材は大きく分けて3つです。
生物由来 | 生物由来+化石由来 | 化石由来 |
· PLA(ポリ乳酸) · 他 | · PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタート)+PLA · 他 | · PBS(ポリブチレンサクシネート) · 他 |
そして、含有物・分解過程での安全性などの基準をクリアした製品には
グリーンプラマークが付けられているので、選ぶ際に注目してみてください。
生分解性マルチの原料・価格の比較
さて、気になるのは実際の製品だと思います。2020年12月現在グリーンプラの認証を受けている製品と価格などを比較できるようにしました。
使われている素材は、ほぼPBATで、ネットで買える製品も一部ありました。
しかし、価格は普通のマルチと比べるとやはりまだまだ高いですね。。。
製品名 | 素材 | メーカー | 色 | 厚さ | 2020年12月時点価格(@楽天市場) | |
1 | キエ丸 | PBAT | ユニック | 黒・透明 | 0.018、0.02 | 7760円から |
2 | エコロームFC | PBAT | 大倉工業 | 黒・透明 | ||
3 | エコローム こかげ | PBAT | 大倉工業 | |||
4 | 野土加(のどか) | PBAT | 住友積水フィルム | 黒・透明 | ||
5 | ビオマルチ | PBSA | 辻野プラスチックス工業 | 3080円から(50m) | ||
6 | 土っこG | PBA(S)/T | 三菱ケミカルアグリドリーム | 黒・透明・銀ネズ | ||
7 | 土気流(とける)G | PBA(S)/T | 三菱ケミカルアグリドリーム | |||
8 | キエール | PBAT | タキロンシーアイ | 黒・白黒 | 0.02 | |
9 | ユニグリーンマルチフィルム(葉タバコ用) | PBS(A) | ユニック | 透明・黒・銀ネズ | 0.015、0.02 | |
10 | Bio-PAL (マルチフィルム) | PBAT | 渡辺パイプ | 透明・黒・銀ネズ | ||
11 | バイオマルチ | PBS(A) | 辻野プラスチックス工業 | |||
12 | サンバイオシリーズ | PBS | サンプラック工業 | 半透明・黒・グリーン・スーパーホワイト | 0.018 | 5850円(最低2本) |
13 | ナトゥーラ | PBAT | 岩谷マテリアル | 黒・透明 | 0.018、0.02 | |
14 | “GRABIO” マルチフィルム | Starch系 | GRABIO Greentech | |||
15 | ビオフレックスマルチ | PBAT | アキレス | 透明・黒・銀ネズ・白黒・ダークグリーン | 0.016-0.02 | |
16 | エコちゃん 農業用マルチフィルム | PBAT | FKグリーン | |||
17 | バイオトップ | PBAT | 辻野プラスチックス工業 | 6550円から(最低5本) | ||
18 | ビオトップ | PBAT | 辻野プラスチックス工業 | |||
19 | カエルーチ | PBA(S)/T | 三菱ケミカルアグリドリーム | 透明・黒・銀ネズ | 0.018 | 8780円から |
20 | エドビ生分解 | BS-LAコポリマー | 渡辺パイプ | |||
21 | 生分解性マルチ きえ太郎Z | PBAT | サンテーラ | 黒・透明 | 0.018 | |
22 | BioCore (BiologiQ mulch film) | PBAT | BiolgiQ Inc. | |||
23 | はぐらん | PBAT | 徳農種苗 | |||
24 | ソイルリターン | PBAT | デンカ | |||
25 | あいさいマルチ | PBAT | 鹿児島県経済連 | |||
26 | イモイモマルチ | PBAT | みかど化工 | |||
27 | ミカドロン Z | PBAT | みかど化工 | |||
28 | スーパードロン | PBAT | みかど化工 | |||
ネット注文で試しやすそうなのは、キエ丸
割高ですが50m分で買えるビオマルチ
あたりでしょうか。。。
実際の使用感と注意事項
今回試しに使用してみたのはこちら
エコロームFCの黒です。ちゃんとグリーンプラマークが付いています。
左がエコロームFCで右はポリの黒マルチです。
ちなみに生分解性マルチは張るときに破けやすいので、注意が必要です(薄いものは特に)。
さらに、植穴をマルチに開けるときは、かみそりで開けると裂けやすいので、バーナーやホーラーで開ける方が良いようです。また、植穴の開いている、有孔タイプを取り扱っているメーカーもあるので、有孔タイプの利用もアリです。
話を元に戻すと、栽培してみた感じは、キュウリだと生育中盤ではあまり差は感じられません。
ですが、こちらのグラフをご覧ください。地下10㎝の地温の推移です。
この素材は空気を通すので、保湿性・保温性はポリマルチよりも劣ります。地温は裸地と変わりません。
こちらはマルチを剥がしたところですが、生分解性マルチのほうがやや乾き気味です。キュウリだと多めのかん水が必要となりそうです。
生分解性マルチ使用におけるその他の一般的な注意事項としては
- 最低注文ロットが大きい場合が多く、注文生産
- 長期保管ができない(使い切る)
- マルチャ―を使用するときはテンションを弛める
- 土壌中の温度が高く水分が多いと、微生物の動きが活発になり、分解速度が上がる
などがあります
最後に
結論としては3か月ほどで栽培が終わる作型で、購入にかかる金銭面がクリアできれば、導入していきたいですね。回収のため、泥を払い、つづら折りにするのは気の遠くなる作業ですので。
ただ、黒の生分解性マルチは、時期によっては明確な昇温効果が得られないということが報告されていて、今回使用した製品もそのようでした。保湿性が劣るという観点からも、このあたりは特に初期生育に影響する可能性を念頭に、栽培を工夫していくとよさそうです。
参考文献:
宮川修 et al. 2006. “スイカ栽培における生分解性マルチ資材の適応性と分解特性.” 石川県農業総合研究センター研究報告 27: 37–42.
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