トウモロコシは吸肥量が多く、肥料をどさっと元肥で入れればいいと思っていませんか?
実はトウモロコシは4葉期まではほとんど肥料を吸収しません。
そんな特徴をつかんで無駄なく肥料をあげていくためのポイントを解説します。
葉の数や雄穂(てっぺんから出る穂)、雌穂(いわゆるトウモロコシの部分)の形成されるタイミングを確認し、適期に追肥して豊作を目指していきましょう。
トウモロコシが肥料を吸収する時期
まずは、こちらのグラフをご覧ください。
トウモロコシの養分吸収曲線
石塚・金 (1967)および瀧沢 (1977)を参考に作成した大まかな養分吸収量のグラフです。緑色の線がチッソ、青色の線がカリ、オレンジ色の線がリン酸を示しています。
左下の播種後からグラフを見ていきます。
そうすると、5月14日に播種した後、7月4日頃までグラフが低空飛行しています。これはなぜかというと、実は発芽から3~4葉期まではタネの中に蓄えた養分だけで生育できるため、肥料の吸収がほとんどないのです。
続いて5~7葉期(雄穂分化が始まる)になると、根が急激に発達すると同時に肥料の吸収が高まります。
よって、この時期にしっかりと肥料が入っていないとトウモロコシの子実の充実に影響を与えます。
その後の雌穂の分化から絹糸(トウモロコシのヒゲの部分)が出始まる頃になると、チッソとカリの吸収量がさらにに高まり、節間伸長も著しくなります。
そのため、この時期まではしっかりと肥料を効かせておく必要があると言えます。
そして、収穫を迎える頃には、リン酸の吸収が進んできますが、チッソとカリの吸収は穏やかになります。
生育期間全体からすると、チッソが一番多く吸収され、次いでカリとなり、リン酸は前者2つからすると少なくなります。
施肥量
ではどのくらいの量の肥料を入れたらよいのかというと、全面全層施肥(畑に肥料を満遍なくまき、耕耘し全面にすき込む)では露地栽培の場合、チッソ・リン酸・カリでそれぞれ、40・30・30㎏/ 10aとなっています(熊本県野菜振興協会)。
トマトやキュウリの場合は各20㎏程度ですから、かなり多いことがわかります。
その一方で、作条施肥(植え付け部分の下3~5㎝のみに列で肥料をまく)の場合はチッソ・リン酸・カリが各15・20・10㎏/ 10a程度でよいとの記述があり(木下 1987)、肥料の撒き方により施肥量に大きな差があります。
全面全層施肥は畝間の通路の部分などを含めて肥料をまくことになるので、多く撒く必要があるのです。
追肥量
肥料の全量は上で示した通りですが、その内のどの位の量を追肥であげたらよいのでしょうか?
こちらが先ほどご紹介した熊本県の露地栽培で奨励されている全面全層施肥の施肥量の詳細です。
施肥量 (kg/10a)
チッソ | リン酸 | カリ | |
基肥 | 25 | 30 | 25 |
追肥 | 15 | 0 | 5 |
全量 | 40 | 30 | 30 |
熊本県野菜振興協会資料より作成
10aあたりチッソを15㎏、カリを5㎏追肥すると良いようですね。
その一方で、リン酸は元肥のみで全量入れることになっています。
この理由は、チッソが他の肥料と比べて溶脱しやすいこと、また上でご説明したとおり生育中盤になって特に吸収されることに起因しています。
簡単に言うと、チッソは水に溶けやすく雨で流れて失いやすいので、元肥で初めに全量入れるのは良くないということです。
その一方、リン酸は生育後半から多く使われるので追肥の時に入れても良いですが、土壌に固定されやすく、手間がかかるので元肥で、ほとんど入れてしまうという考えです。
また、チッソの元肥と追肥の量を比較すると、元肥が25㎏、追肥15㎏と元肥の方が多くなっています。これは元肥として植物が吸収できる形になるまで時間のかかる堆肥などの有機物を投入することを見込んで元肥を多めにしていると考えられます。
栽培指導書によっては元肥と追肥を半量ずつとしていることもあり、しっかりと追肥ができれば元肥と追肥は半量ずつでもOKです。また、緩効性肥料を使う場合など、肥料の種類によっても調節してください。
家庭菜園の場合(肥料計算)
肥料の表記は10a(10アール)あたり○kgと表示していますが、10aというのは1000㎡のことなので、家庭菜園などで使いやすい1㎡あたりに直す時には1000で割ります。
つまりチッソ・リン酸・カリが40・30・30㎏/ 10aの場合は、40・30・30g/ ㎡となります。
ですが、そのまま肥料を40gや30g与えればよいわけではなく、肥料の成分含量によってさらに計算していきます。例えばこちらの肥料をご覧ください。
16-16-16と記載されています。これはチッソ・リン酸・カリの成分含量の比率が各16%という意味であり、この肥料を100gまくとチッソ・リン酸・カリが各16gずつ入ると計算できます。
そのためこの肥料を使うとするならば1㎡あたり、全量で200g入れるとチッソ・リン酸・カリが32gずつ入るので、堆肥や前作の土に残った肥料を勘案すると丁度よいといったところでしょう。
まとめ(元肥と追肥の量とタイミング)
以上のことを総括するとこのようになります。
まずは、元肥として全量の半分程度入れます。そしてタネのエネルギーが尽きる5葉期に追肥として残りの半量(全量の1/4)、雄穂が出て、雌穂が分化してくる頃に残りの半量(全量の1/4)を2回に分けて追肥します。
追肥2回は大変という場合は、元肥を全量の半分程度入れ、雌穂が分化してくる頃に残りの半分を追肥とするのが良いでしょう。
追肥の場所ですが、株元ではあまり吸収されないので、株元から20㎝ほど離れた、株と株の間(2条植えならば畝の中心など)に撒いてくみてください。
おわりに
ちょっとマニアックな肥料の話でしたが、いかがでしたでしょうか?
簡単にまとめると、16-16-16の肥料ならば、200g/㎡ぐらいの量をまいてくださいというお話でした。
追肥のタイミングの間でアワノメイガ対策なども施す必要があります。
それについてはこちらの記事も参考にしてみてください。
参考文献:
木下耕一. 1987. “作型別の栽培技術.” In 『農業技術大系』作物編第7巻, 農山漁村文化協会, 基155-基169.
瀧沢康孝. 1977. “Ⅱ栽培の実際.” In 『農業技術大系』作物編, 農山漁村文化協会, 基98-基117.
石塚喜明, and 金雄桂. 1967. “トウモロコシの栄養生理学的研究(第1報)生育に伴う同化産物の生成と養分吸収に関する研究.” 日本土壌肥料学雑誌 38(11): 407–12.
熊本県野菜振興協会. 熊本のやさい耕種基準. http://www.k-engei.net/yasai/general/koushu_standard.shtml 2021年5月23日確認
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