ズッキーニの人工受粉方法

ズッキーニズッキーニ

だんだんと夏っぽくなってきましたねぇ。

遅ればせながらイネの播種が終わりました。

みい@博士(農学)です。

今回は、怒涛の開花ラッシュが続いているズッキーニの受粉(交配)方法タイミング雄花がないときの対処法についての記事です。

ズッキーニの受粉(交配)方法とは?

ズッキーニは専門用語で、雌雄同株異花の植物です。何を言いたいのかというと、ズッキーニは、雌花と雄花が一つの株の中でどちらも咲きますが、1つの花の中に雄しべと雌しべがあるわけではなく、異なる花として咲く植物ということです。キュウリもそうですね。

ズッキーニの雄花・雌花(小さいズッキーニがついている方が雌花です)

ズッキーニ 雌花 雄花

そのため、ズッキーニの実を成らせるためには同じタイミングで咲く雄花と雌花が必要で、受粉しなければ実が成りません。受粉ができていない場合は、開花の数日後に雌花の花のついている方から腐ってきます。

雄花も雌花も咲いている場合は、虫が花粉を持ってきて受粉させてくれるかもしれませんが、確実ではありませんので、人工受粉をして確実に実が肥大するようにします。

 

人工受粉の方法は簡単で、まず当日開花した雄花を摘み取って、雄花の葯の先で当日開花した雌花の柱頭にやさしくポンポンするだけです。

ズッキーニ 交配

雄花の花びらが邪魔なのでとってしまうと、交配しやすいです。

花粉が出ているかどうか(黄色の粉が出ているかどうか)も併せて確認してください。

ズッキーニ 受粉

花粉を雌花の柱頭につけます。強く擦りつけないように注意して下さい。

 

みい
みい

ちなみに、黄色のズッキーニの花粉(花粉親)緑のズッキーニの雌花にかけた場合、肥大する果実が花粉親の色になることはありません。色は気にせずOKです。

 

受粉(交配)のタイミングは?

雄花の花粉は開花前日の午後から発芽力を持ち始めますが、まだこの時点では開花はおろか葯が裂開していません。15時過ぎから急激に花粉の発芽力が高まり、ピークは開花前日の18時頃で、その後緩やかに発芽力は弱まっていき開花当日の12時頃には発芽力を失います(早瀬 1956)。

西洋カボチャの花粉の発芽力のピークが開花当日の0時頃なので、比べるとズッキーニのほうが早いです。この頃になると裂開して花粉が見える状態になり、花粉としては最高の状態になります。

雌花はというと、雄花から遅れて、明け方の4時頃が結果率のピークになります。花粉先熟というわけです(児玉 1939)。

加えて、花が開花するのも明け方4時頃からなので、4時は無理でも、できるだけ早い時間に交配するようにします。

みい
みい

時間が経過するほど花粉の発芽力が落ちていくので、8時ごろまでには交配を終えておきたいところです。

 

雄花がない場合は?トマトトーン!

待望の雌花が咲いているのに雄花がない!ということが起こると思います。そんなときは、こちらを使います。

トマトトーンです。

ホームセンターなどでも200円くらいで買えると思います。

トマトトーンはトマトなどの着果を促進するために使われる、植物ホルモン剤です。花粉に含まれているオーキシンという植物ホルモンの代わりに、同様の働きをするパラクロロフェノキシ酢酸(4-CPA)を散布することによって果実を肥大させます。

ズッキーニ トマトトーン

やり方は簡単です。50倍に水で薄めて、霧吹きに入れ、花に向けてスプレーします。1プッシュでOKです。

多すぎたり、花以外の部分(特に生長点)にかかると障害が出ることがあるので、花だけにかけるようにします。

注意書きには

 ズッキーニに使用する場合、生育初期の雄花が少ない時期は結実が不安定であり、十分な効果が期待できないので使用しないでください。

とあり、トマトトーンを使うと種が入らないこともあり、花のついた側(種が本来入る部分)が細く、生育初期には奇形果ができやすいかもしれません。

ズッキーニ トマトトーン雄花が少ない時期だからこそ使いたいのですけどね。

 

ズッキーニ トマトトーン収穫が遅れて、巨大になったズッキーニです。ナスではありません(笑)

トマトトーンを使っていると、上記したように種が入らないので、大きくなっても食べられます。生育が軌道にのってきたら使ってみてください。

 

使い残りの希釈液は、4週間程度までの保存は可能ですが、なるべく早く使用してください。

ということで、1回作ればかなり日持ちします。

 

他のカボチャの花粉を使ってみる

受粉したいのに、ズッキーニの雄花が咲いていないし、トマトトーンもない!という時もあると思います。

そんな時の奥の手としては、ズッキーニ以外に西洋カボチャ(一般的なカボチャ)日本カボチャ(カボチャの馬車で使うようなボコボコしたカボチャ)が植えてあり、そこの雄花が開花しているならば、その雄花の花粉(+トマトトーン)を使う手があります。

花粉管の伸長歩合

ズッキーニが雌花の場合西洋カボチャが雌花の場合日本カボチャが雌花の場合
ズッキーニ×西洋カボチャ

29.4%

西洋カボチャ×ズッキーニ

37.5%

日本カボチャ×ズッキーニ

26.2%

ズッキーニ×日本カボチャ

20.5%

西洋カボチャ×日本カボチャ

40.5%

日本カボチャ×西洋カボチャ

77.4%

高島(1935)をもとに作成

結実率は2から3割ほどとそこまで高くはないと思われますが、やってみる価値はあると思います。

話が逸れますが、西洋カボチャや日本カボチャにズッキーニの花粉で交配した組み合わせの方が結実する可能性が高いようですね。

ちなみに、ズッキーニに西洋カボチャの花粉を使って交配しても(その逆も然り)、その果実が西洋カボチャ(花粉親)のようにになることはありません

 

おわりに

ズッキーニはカボチャの仲間なので、基本的にはカボチャに準じて栽培できます。しかし、カボチャにはトマトトーンを使用できませんのでご注意ください。2010年に登録が外れました。

 

 

参考文献:

児玉政弘 (1939) 南瓜授粉時刻と結顆率と関係. 農及園 14 (4).

早瀬広司 (1956) カボチャ属の交雑に関する研究 Ⅶ.柱頭において花粉が発芽開始する時刻と葯の裂開. 育種學雜誌 4:261-267.

高島四郎 (1935) 南瓜属種聞の交雑による花粉管伸長歩合第1報.遺伝学雑誌 25:233-237

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