暑くなりましたね。
今回は、ウリハムシについてです。
キュウリだと、実が成り疲れて木がボロになってくると現れるオレンジ色っぽい虫です。
追い打ちをかけるように葉や花びら、果実表面をかじりますので、対策をしておきましょう。
ウリハムシの食害痕
これがウリハムシの代表的な食害痕(葉を食べた跡)です。
丸くくりぬいて食べるのが特徴です。
ズッキーニもです。
こちらは、丸く囲むだけ囲んで、中の葉を食べる前にどこかに行ってしまったようですね。
この特徴的な食べ方はトレンチ行動と呼ばれています。
摂食前に葉にトレンチ(溝)を作って囲むことで、咀嚼行動を阻害する汁液(乳液や樹脂、師管液など)を外に排出し、囲われた部分へ流れ込まないようにして中の葉の部分を食べる行動のことです(Denno and Dussourd 1991)。
McCloud, Tallamy, and Halaweish (1995)によると、トレンチ行動をするマダラテントウの場合は人為的にカボチャ、インゲンマメの師管液、水の3つをそれぞれ口器に付着させると、カボチャ師管液を取り除くための身づくろいに最も時間がかかります。
恐らくウリハムシも口(口器)にキュウリの師管液がつくと、ベタベタして大変なのだと思います。
なので、先に囲って師管液が入らないように工夫しているんですね。
以前はウリ科の苦み物質であるククルビタシンを防ぐためにトレンチ行動すると考えられていましたが(ククルビタシン説)、現在は上記の説の方が有力です。
トレンチ行動は、葉脈が編み目のように張りめぐらされた管構造をもつ植物(ウリ科・パパイヤ科・キク科など)を寄主としている昆虫種にみられます(Denno and Dussourd 1991)。
ウリハムシのライフサイクル
大まかなウリハムシのライフサイクルは以下の通りです(池本 1958)。
8月:新成虫の出現
9月:越冬場所に移動(灌木の葉裏に留まる)
10月:岩の割れ目、雑草の根本で越冬
翌春:圃場に移り産卵
Napier (2015)によると、卵は枯れた葉や、草木の下の湿った土などにいくつかまとめて産卵されます。
そこから10日ほどで卵から孵り、クリーム色から白色のイモムシの形態になります。長さは1㎝から1. 2㎝です。この期間に根を食害します。期間はおよそ35日です。
その後蛹になり、成虫へと変態します。
ちなみに、ウリハムシはウリ科の中でも、マスクメロン>キュウリ>ヒョウタンの順で好むようです。宿主として適さないのは、ゴーヤ、ヘチマ、ヘビウリなどです(Khan 2013)。
対応策(農薬)
それでは、発生した場合どうするのかというと、そんな時はまず、曲がっているキュウリを小さいうちに摘み取って、着果負担を減らしてあげたり、古くなってきている葉を摘葉したりしてケアをしてあげながら、木を若返らせてウリハムシを寄せ付けないようにしていきましょう。
かなりの数がついている時は、追い払っても埒が明かないですから、農薬をかけておきましょう。成虫に対しては収穫前日までOKです。キュウリで2020年6月現在ウリハムシに登録があるのは以下の農薬です。
家庭菜園用
色々と出ていますが、ネオニコチノイドとピレスロイド中心です。
農薬名 | 一般名 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 | 作物 | 対象 | RAC NO. と系統 |
家庭園芸用ダイアジノン粒剤3 | ダイアジノン粒剤 | 植付時 | 1回 | 土壌混和 | きゅうり | ウリハムシ幼虫 | I: 1B:有機リン |
家庭園芸用マラソン乳剤 | マラソン乳剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 1B:有機リン |
ベニカベジフル乳剤 | ペルメトリン乳剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 3A:ピレスロイド |
ベニカAスプレー | ペルメトリン乳剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 3A:ピレスロイド |
ベニカベジフルスプレー | クロチアニジン液剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
ガーデンアシストVスプレー | クロチアニジン液剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
スターガードプラスAL | ジノテフラン・ペンチオピラド水和剤 | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド/F: 7:ピラゾールカルボキサミド |
オールスタースプレー | ジノテフラン液剤 | 収穫前日まで | 2回以内 | 希釈せずそのまま散布する | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
ベニカXネクストスプレー | 還元澱粉糖化物・クロチアニジン・ピリダリル・ペルメトリン・マンデストロビン水和剤 | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I:未:気門封鎖系殺虫剤/I: 4A:ネオニコチノイド/I:UN:ピリダリル/I: 3A:ピレスロイド/F:11:メトキシアセトアミド |
ベニカVフレッシュスプレー | 還元澱粉糖化物・クロチアニジン・マンデストロビン水和剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I:未:気門封鎖系殺虫剤/I: 4A:ネオニコチノイド/F:11:メトキシアセトアミド |
家庭菜園用おススメ農薬
たくさんあると、どれを買ったらよいか迷われると思いますので、おススメを1つご紹介します。
オールスタースプレーです。
調整不要で、そのまま全体にスプレーするだけのラクチン仕様です。
有効成分のジノテフランは、浸透移行性があるので、葉の裏までうまくスプレーできていなくても大丈夫です。もちろん収穫前日まで使えます。
殺菌剤も入っていた方がよいならばスターガードプラスALでもよいのですが、なくてもよいと思います。
また、ジノテフランはコナジラミなどにもよく効くのでこれが1本あると便利だと思います。
一般農薬
こちらもピレスロイドとネオニコチノイドが中心です。こちらはそれに加えてコテツもOKですね。
農薬名 | 一般名 | 使用時期 | 使用回数 | 使用方法 | 作物 | 対象 | RAC No.と系統 |
マラソン乳剤 | マラソン乳剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 1B:有機リン |
マラソン粉剤3 | マラソン粉剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 1B:有機リン |
マラソン粉剤1.5 | マラソン粉剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 1B:有機リン |
マラソン乳剤50 | マラソン乳剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 1B:有機リン |
ダイアジノン粒剤3 | ダイアジノン粒剤 | は種時又は植付時 | 2回以内 | 土壌混和 | きゅうり | ウリハムシ幼虫 | I: 1B:有機リン |
アディオン乳剤 | ペルメトリン乳剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 3A:ピレスロイド |
トレボン粉剤DL | エトフェンプロックス粉剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 3A:ピレスロイド |
モスピラン水溶剤 | アセタミプリド水溶剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
モスピラン顆粒水溶剤 | アセタミプリド水溶剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
スタークル顆粒水溶剤 | ジノテフラン水溶剤 | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
アルバリン顆粒水溶剤 | ジノテフラン水溶剤 | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I: 4A:ネオニコチノイド |
コテツフロアブル | クロルフェナピル水和剤 | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | きゅうり | ウリハムシ | I:13:ピロール |
おわりに
私のところでは節成りキュウリの摘芯栽培をしたので、木がもう終盤です。ウリハムシも出てきました。
ウリハムシはキュウリの木が疲れてきたときのアラートですね。
それではまた。
参考文献:
Denno, David E., and Robert F. Dussourd. (1991) “Deactivation of Plant Defense : Correspondence Between Insect Behavior and Secretory Canal Architecture.” Ecological Society of America 72 (4): 1383–96.
池本始. (1958) ウリハムシの水分および脂質含有量の季節的変化. 日本応用動物昆虫学会誌 2 (2): 119-122. https://doi.org/10.1017/CBO9781107415324.004.
Khan, MMH. (2013) “Host Preference of Pumpkin Beetle to Cucurbits under Field Conditions.” Journal of the Asiatic Society of Bangladesh, Science 38 (1): 75–82. https://doi.org/10.3329/jasbs.v38i1.15322.
McCloud, E. S., D. W. Tallamy, and F. T. Halaweish. (1995) “Squash Beetle Trenching Behaviour: Avoidance of Cucurbitacin Induction or Mucilaginous Plant Sap?” Ecological Entomology 20 (1): 51–59. https://doi.org/10.1111/j.1365-2311.1995.tb00428.x.
Tony Napier (2015) Pumpkin beetles: Pests, Beneficials, Diseases and Disorders in Cucurbits: Field Identification Guide, NSW Agriculture, Australlia
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