収穫時期シリーズ第3弾ということで、今回はエダマメを取り上げます。
エダマメをいつ収穫するか、ということなんですが、みなさんどうしていますか?
草丈が30㎝位しかないので、いちいちしゃがみこんで膨らみ具合をチェックするのもおっくうだなーと、思われている方も多いのではないでしょうか?
ということで今回はエダマメの収穫目安とあわせて収穫後の保存方法を解説します。
エダマメの収穫時期
エダマメはスイートコーンと同様に、子実を未熟な若い状態で食べる野菜のため、大きさや、糖度、アミノ酸含量が急激に変化する中で収穫を迎えます。
そのため、収穫適期が非常に短く、かつ、開花が1株の中で10日から黒大豆エダマメでは20日ほどもバラツクことから、いつ収穫すればよいのかという判断が難しい作物です。
収穫が早いと、豆の大きさが小さく、莢の色が品種本来の鮮やかさに欠け、遅いと食感は粉質で、エダマメの香りが弱く、莢の色が薄くなります。
収穫時期の目安は様々検討されていて、有効積算温度を計算する方法(岡ら 2005)や、莢の厚みを基準にする方法(細野・片山 2016)などがありますが、開花後の日数でみるのが一般的かと思います。
開花後日数でみる収穫適期
品種 | 収穫適期 (開花後日数) | その他 |
ふくら(中早生) | 30日から40日(水野・橋本ら 2015) | 開花後40日を過ぎると、急激に乾燥、退色が進む |
湯あがり娘(中早生) | 30日から40日(水野・橋本ら 2015) | ふくらと比べると、乾燥が緩やかなので、収穫が遅れてもダメージが少ない |
あきた香り五葉(中晩生) | 48 から52 日(本庄ら 2008) | |
丹波黒大豆エダマメ(兵系黒3号)(極晩生) | 61日から74日ごろ(廣田ら 2003) |
家庭菜園だと、日長によって開花・結実が左右されない夏ダイズ型の中早生品種(生育期間が80から85日前後)が多いと思います。
このタイプの収穫適期は概ね開花後35日±5日です。
品種によって多少異なりますが、この頃を目安にチェックして収穫遅れのないようにしていきましょう。
また、品種によって、開花後40日以降の水分の抜け・黄化(=ダイズに近づく)速度が異なるので、あまり頻繁に畑に行けない方は、湯あがり娘のような品種を栽培しておくと安心です。
ちなみに、黒大豆岡山系統1号のエダマメの子実中に含まれるショ糖含量は収穫前7 日間の日照時間が多いほど増加したと報告があるので(高野ら 2012)、収穫前に晴れが続くと甘味が強くなるかもしれませんね。
エダマメの収穫後
エダマメはトウモロコシ以上に、収穫後に甘味や旨味(アミノ酸)を失いやすく、収穫後のケアが極めて重要な作物です。
それゆえ、エダマメは他の野菜同様、収穫後は急速に冷やして、品温を下げることが大切です。
収穫時、糖度がおよそ3%で収穫したダダチャマメ(莢)の全糖量は岩田・白幡 (1979)によると
- 0℃で保存すると、3週間後でも糖度は保たれます。
- 5℃で保存すると、2日目まではほとんど変わりませんが、1週間後では約40%の糖を失ってしまいます。
- 20℃保存では、1日で約30%の糖を失ってしまいます。
0℃に近いほど糖の減少は抑えられるので、収穫時は、クーラーBOXに保冷剤などと一緒に入れて持って帰るなど工夫できるとGOODです。
葉付き、根付きの株ごと保存
先ほどのデータは、莢で保存した場合でしたが、株ごと保存した場合はどうでしょうか?スーパーでも株ごと売られているので、ご存じの方も多いかと思いますが、この方が糖の減少を遅らせることができます。
収穫後20℃で、袋に入れて密封保存したダダチャマメの場合(岩田・白幡 1979)、
- 株ごと(根・葉含む)=葉付き包装保存すると、収穫2日後までほとんど糖が減少しません。
- 株ごと(葉は取り除く)=枝付き包装保存すると、収穫2日後にはおよそ15%の糖が減少します。
- 莢だけで保存すると、収穫2日後にはおよそ30%の糖が減少します。
ちなみに、所々穴を開けた袋に莢を入れてれて保存すると、収穫2日後にはおよそ50%の糖が減少します。
20℃でも袋に入れて、根と葉を付けてておくことで、収穫2日後まで糖の減少を抑えられます。他人にあげたりするのであれば、場所はとりますが、葉付き包装一択ですね。
アミノ酸含量は?
ここまでは糖についてフォーカスしましたが、アミノ酸含量もまたエダマメの旨味を感じるうえで大事な要素です。
エダマメに含まれる遊離アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン)も同様に、0℃に近いほど、また、葉付き>枝付き>莢の順で、減少が抑えられます(水野・田中 2015)。
ちなみに20℃で24時間貯蔵すると、ふくらと湯あがり娘の場合、全糖量・アミノ酸含量共に、およそ50%まで減少してしまいます(水野・田中ら 2015)。
おわりに
エダマメは時間と共に刻一刻と糖・アミノ酸含量は減少していくため、できれば根を付けて株ごと収穫し、とにかく早く冷やすということを頭に入れていきましょう。
品質を保つのは難しい一方で、適期に収穫し、収穫したてを食べられれば、それだけで十分スーパーで売っているものよりもおいしいハズです。
参考文献:
岡・大山・小川 (2005) “有効積算温度を用いたエダマメ品種の収穫適期予測法.” 宮城教育大学紀要 40: 201–208.
岩田・白幡 (1979) “エダマメ収穫後の品質変化とその防止(第1報).” 園学雑 48(1): 106–113.
廣田・田畑・福嶋・井上 (2003) “丹波黒大豆エダマメの収穫時期が品質に及ぼす影響.” 兵庫県立農林水産技術総合センター研究報告 51: 19–24.
本庄求 ら (2008) “エダマメ品種‘あきた香り五葉’の収穫判断基準と収穫判定スケール.” 東北農業研究 61: 179–80.
水野・橋本ら (2015) “エダマメ‘ふくら’と‘湯あがり娘’における生育中の品質関連因子解析に 基づく収穫適期の評価.” 園学雑 14(1): 61–67.
水野・田中ら (2015) “収穫後の貯蔵温度,形態がエダマメ‘ふくら’と‘湯あがり娘’の品質に及ぼす影響.” 園学雑 14(3): 297–304.
細野・片山 (2016) “エダマメ収穫適期の指標 −莢厚増加速度,相対莢厚および 子実重の利用−.” 生物と気象 16(0): 80–85.
高野ら (2012) “黒大豆‘岡山系統1号’エダマメの成熟に伴う食味成分の変化と収穫適期.” 岡山県農業研報 3: 17‐22.
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