キュウリのうどんこ病菌

キュウリ

STAY HOMEもどこ吹く風。もうすでに日焼けして顔だけ黒い。

みいです。

病気の種類がわからない方でも、うどんこ病という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。今回はうどんこ病についての掘り下げ記事です。うどんこ病菌とはどんな菌か、発生しやすい状況、簡単な治療法について解説します。

 

他の病気と比較したい方は、こちらからもどうぞ

 

キュウリのうどんこ病

病斑は葉の表面にポツポツと白い粉が吹いたように発生します。茎にも病斑が及ぶこともありますが、主に葉(時に葉の裏に)に発生します。

うどんこ病 キュウリ

胞子の発芽後、菌糸は同心円状に進展し、表皮細胞に吸器を形成します。それゆえ、うどんこ病の治療跡は上の写真のようにリング状になります。

うどんこ病 キュウリ

発生したまま放置しておくと、葉全体が白く覆われます。秋には冬越しのため、胞子が詰まっている閉子のう殻(卵でいうところの殻)ができるので灰色っぽく見えるようになります。

 

キュウリのうどんこ病菌の特徴

うどんこ病菌は、子嚢菌類ウドンコカビ目(Erysiphales)ウドンコカビ科(Erysiphaceae)に属しており、日本で発生するうどんこ病菌は完全世代属で 11属、種数は完全世代,不完全世代 あわせて 264種 15変種あります(高松 2012)。

そのうち、日本で発生するキュウリうどんこ病は、下記の2種類の菌によって引き起こされることが報告されています。

 

  • Podosphaera xanthii(syn. Sphaerotheca fuliginea
  • Golovinomyces cichoracearum(syn. Erysiphe cichoracearum

どちらもキュウリのうどんこ病を引き起こすのですが、それぞれ特徴があるので以下で説明します。

 

ちなみに、うどんこ病は、どの植物でも似たような病斑を示しますが、植物種ごとに罹る菌の種類が決まっている、「宿主特異性」があります。そのため、例えば畑の隣に植えてあるイチゴがうどんこ病に罹っていても、イチゴのうどんこ病菌はキュウリには感染しません。

 

① Podosphaera xanthii(syn. Sphaerotheca fuliginea)

こちらの菌は昔から発生が報告されていた一般的に認知されているウリ類のうどんこ病菌です。

宿主はキュウリ以外にもヒマワリ、オクラ、アマチャズル、エノキグサ、ヒャクニチソウなど多数報告されています。

分生胞子の発芽適温は25℃、飽和湿度下 (99%RH)でのみ発芽率が高く、98%以下では著しく発芽率が下がります。

その一方で、温度25℃で菌を葉に接種すると、湿度99%(葉が濡れている状態)では接種9日後でも菌そうは現れず、湿度95%~85%で6日後、湿度45%~75%では5日後に菌そうが現れることから、やや乾燥した環境で発病が促進することがわかっています(我孫子・岸 1979)。

また、分生胞子の飛散は晴天で乾燥の条件下で昼頃の時間帯に多く、無風で湿度の高い夜間には少なくなります(遠藤 1988)。

分生胞子は少なくとも10㎞、高さ1,600mまでは飛散し、伝染力を保持できるようなので (遠藤 1989)、どこからともなく飛んでくると思っていた方がいいでしょう。

雑草上に形成された子のう胞子および、分生胞子はいずれも容易に越冬し、翌年の4月下旬ごろに子のう胞子を放出し、キ ュウリへの伝染源となります。一方、土中では3か月ほどで消滅するので土の中にすき込めば伝染源とはなりません(遠藤 1985)。

② Golovinomyces cichoracearum(syn. Erysiphe cichoracearum)

発芽適温は15℃から20℃と① のP. xanthiiよりも低めです。

宿主は、ジニア、ダリア、ヒマワリ、オミナエシ、パンジー、トレニア、スコパリアなどになります(星 2013)。

胞子の発芽適温が、P. xanthiiよりも低いので、Golovinomyces cichoracearumは東京では5月中旬ごろまで発生し、その後気温が高くなるとP. xanthiiが優位になり同時発生はほとんどないと報告されています (星ら 2009)。

ちなみにキュウリで発病したGolovinomyces cichoracearumはウリ科の中でもスイカやズッキーニでは接種しても発病しません。シロウリ、西洋カボチャ、メロン、カラスウリでは発病します(星 2013)。

発生しやすい状況

上記のように、感染の初期には高湿度が必要になりますが、その後の分生胞子が発芽し、菌糸を伸ばしていく過程においてはやや乾燥したほうが広がりやすくなります。

春先から初夏と秋(15℃から25℃の間)がシーズンです。※10度以下と35℃以上では胞子形成がほとんどされません (我孫子・岸 1979)。

簡単な治療方法と農薬散布のポイント

降雨や水で葉を濡らすことでも予防・治療効果が得られます(我孫子・岸 1979)。

菌糸が水をはじくので、農薬を散布するときは、薄い濃度でもしっかり洗い流すようにかけると効果的です。

 

おわりに

ハウスの方はこの時期40℃越えなので、うどんこ病はもうでなくなりました。

植物よりも先に人が倒れそうなので、遮光カーテンがほしい今日この頃です。

 

参考文献:

我孫子和男・岸国平(1979)キュウリうどんこ病の発病に及ぼす温度並びに湿度の影響. 野菜試験場報告A.5:167-176

遠藤忠光(1985)ウリ類うどんこ病の流行機構に関する研究(7). 福島県農業試験場研究報告 24:77-90

遠藤忠光(1988)ウリ類うどんこ病菌Sphaerothecafuliginea(Schlecht.)Poll.の伝染環に関する研究. 東北大学機関リポジトリ

高松進(2012)2012年に発行される新モノグラフにおける うどんこ病菌分類体系改訂の概説. 三重大学大学院生物資源学研究科紀要38:1-73

高松進(2002)うどんこ病菌の分子系統と新しい分類体系. 植物防疫56(6):229-237

星秀男・佐藤幸生・堀江博道 (2009)  東京都における OidiumReticuloidium亜属菌によるキュウリうどんこ病の発生実態. 日植病報75:21-28 

星秀男(2013) カラスウリに新発生した OidiumReticuloidium 亜属 うどんこ病菌とキュウリに発生する同亜属菌の異同 および自然界における相互感染の可能性. 植物防疫67(9):498-503

この記事を書いた人
みい

博士(農学)
専門は栽培学、植物生理学です。

種苗会社、農業資材・ハウス販売会社、大学で勤務経験ありです。

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